盡心章句下
九
孟子曰、身不行道、不行於妻子、使人不以道、不能行於妻子。
孟子は言う。
「自分自身が正しい道を行かなければ、妻子にすら正しい道を行かせることはできない。他人を使うときに正しい道をもって行なう心がなくては、妻子すら使うことはできない。」
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自分が正しい道を行かなければ、一番身近な他者である妻子すら正しい道を生かせることはできない。個人の心掛けを正しくすることを皮切りにしてだんだんと他人に徳を及ぼす範囲を拡張していき、やがては舜のように天下を治めることもできるだろう。それが孟子の常の主張である。だから、「天下の本は国、国の本は家、家の本は自分自身」(離婁章句上、五)と言うのであり、「人々が自分の親を親として敬い、世間の年長者を年長者として敬うことをすれば、結局天下は平らかに治まる」(同、十一)と言うのだ。ゆえに本章の主張は、ただの個人的な倫理に止まらない含意を帯びているのである。
(2006.04.04)