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盡心章句下





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孟子曰、舜之飯糗茹草也、若將終身焉、及其爲天子也、被袗衣鼓琴、二女果、若固有之。

孟子は言う。
「舜の庶民時代は、乾飯と野菜など食らう毎日だったが、一生涯その生活のままで過ごすかのような姿勢であった。それが天子の位に即いて、麗装を身にまとって鼓と琴を持ち、堯の娘二人が仕える生活となった。しかし彼は前からそれらの豪華な暮らしを持っていたかのようであった。」

本章句上、三などと同様のテーマである。富貴貧賤によって心が変わることなどなく、「天爵」として天から与えられた自らの徳にだけ安んじる聖人舜の心のありようが説明されている。

本章の舜や漢の劉邦、わが国の豊臣秀吉などの出世物語は、人間誰しもが夢見るものだ。「成功を目指せ」というメッセージは、資本主義社会を前に突き動かす中心倫理である。儒教やストア派哲学の教えは、そのような考えと必ずしも衝突するものではない。「成功や失敗の向こうにある、人間として大事な徳があるのだ」と言っているのである。資本主義というものは、各人が考え出した新機軸に対してわずかの期間だけ独占的利潤を与える。しかしすぐにその新機軸は追随者によって模倣されて、やがて独占的利潤は消えてしまう。そうやって新機軸を社会全体の共通財産に組み込みながら、各人に対して不断に新機軸を作るように競争させるのである。それはおそらく世界の終末まで、いつまでも終わらない。そのような永遠の繰り返しの中に生きるしかない人間にとって、少しずらした視点を持つこともまた、よき功能があるに違いない。だから、儒教やストア派哲学の教えもまたおそらく今後とも捨てられることはないであろう。


(2006.04.03)



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