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盡心章句下






孟子曰、古之爲關也、將以禦暴、今之爲關也、將以爲暴。

孟子は言う。
「いにしえの時代において関所を設けた理由は、暴を防ぐためであった。しかし今の時代の関所は、君主が暴を行なうために設けられている。」

周の文王が関所で検査だけにとどめて課税しなかったことは、梁恵王章句下、五でも述べられていた。それが歴史的真実であったかどうかなどは、限りなく怪しいが。何にせよ関所税は住民をよく把握できていない武断勢力などにとって、最も手っ取り早い課税方法であった。清朝末期においても、各地の軍閥が釐金(りきん)と称する関所税を徴収して社会を疲弊させた。もはや清朝には統治能力がなく、各地の実力者たちに王朝を支えてもらう代償として独自に課税する権限を与えたのだ。粗放な統治体制では、関所税のように待ち伏せて課税するやり方が現金を吸い上げるために最も効果的な方法となってしまうのだ。それが流通を妨げて経済を最もいじけさせる道であるにも関わらず、である。だがもう少し政府に統治能力があるならば、酒税・塩税・奢侈品税などの間接税を採用できるであろう。更に統治能力が上がれば、各人・各企業からの所得税や法人税を採用する道も開けてくるだろう。このように、社会全体への統治の網の目の発達がなければ、適切な税制も取りようがないのである。単に掛け声だけの仁政を繰り返して粗放な統治体制のまま二千年間を過ごしてしまったのが、中華帝国の哀しさであった。


(2006.04.03)



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