告子章句上
十一
孟子曰、仁人心也、義人路也、舎其路而弗由、放其心而不知求、哀哉、人有鶏犬放、則知求之、有放心而不知求、學問之道無他、求其放心而已矣。
孟子は言う。
「仁とは、人の真の心である。義とは、人の真の路である(離婁章句上、十の表現も参照)。その路を捨てて指針もなく、その心が出て行っても求めることを知らないとは、哀しいかな。人は鶏や犬が出て行けば捜し求めるのに、心が出て行っても探し求めることを知らない。学問の道とは他ならず、その出て行った心を求めることに尽きるのだ。」
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孟子が学問の重要さを説いた、最も有名な章。儒教は士大夫エリートに教養を身に付けて立派な君子となることを薦めるから、学問は最も重要である。だから、孔子も荀子も学問の重要さを力説する。しかし『孟子』全篇は論争集の色彩が強くて、このような正面から学問の意義を論じた主張は影が薄い。